今回のインタビューは、社会福祉法人觀寿々会の特別養護老人ホームに勤める3人で結成した「マイボディガード」さん。3人のお話をお聞きしたので、今回は前編/後編と分けてのご紹介です。利用者さんのために、職場環境の改善に奔走しながら、Twitterでは、介護に関するポジティブな情報や、自己啓発で得た内容を発信しているそう。マイボディガードの3人から、活動に至る経緯や活動内容、今後の抱負などをお聞かせいただきました。
3人の紹介
まずは、マイボディガードの3人を簡単にご紹介させていただきます。
長井優武さんは、石黒さんと同じ福祉の専門学校を卒業し、同法人に就職。
社会福祉法人觀寿々会では、介護職員・介護支援専門員・衛生管理者として従事。
海外研修を経て、職場環境の改善の最前線に立ち、改革を進めてきた。
石黒直紀さんは、長井さんと同じ福祉の専門学校を卒業し、同法人に就職。
社会福祉法人觀寿々会では、生活相談員・介護支援専門員として従事。
介護保険についての知識、Excel、Word、PowerPoint、PC関連などは、施設内トップといっても過言ではないほど。
西川洸我さんは、入職した際に、長井さんの部下として配属。
社会福祉法人觀寿々会では、介護職員・褥瘡予防マイスターとして従事。
施設内ではムードメーカーの一面を持つ一方、他業界の技術や制度などを介護に応用できないかと、常に思考を巡らす。
マイボディガード結成!ー介護のことならマイボディ✌️
初めまして、今日は、よろしくお願いします!
どうして、3人でマイボディガードを結成されたのですか?
法人内・施設内の人的資源、時間的資源が限られる中、もっと利用者さんのためにレクレーションや個別ケアの時間を取りたいという思いが強くありました。働くみんなの環境改善、働き方の改革も必要だと感じていました。もともと同じ学校を卒業し、同じ法人に就職した長井、石黒、そして長井の部下である西川の3人とで、その思いが共通であったことから、マイボディガードの構想を練り始めました。
どうして「マイボディガード」なんですか?
マイボディガードは、『あなたの生活を護る』という意味です。『介護のことならマイボディ✌️!(CM風に)』です!
福祉とは、「しあわせ、幸福」。特に、「公的扶助による生活の安定や充足」、あるいは「人々の幸福で安定した生活を公的に達成しようとすること」だと、私たちは捉えています。それを前提として、「body」は「福祉」、「my」は「利用者、家族」、そして「gard」は「守る・護る」。つまり、マイボディガードは、『あなたの生活を護る』ということになります。
考え抜かれていますね!
職場の環境改善ー長井さんの海外研修で得た3つの学び
どんな活動をしているのですか?
大きく分けて、「改革」と「発信」の2つの活動をしています。です。「改革」は、私たちの職場の働く環境の改革です。「発信」は、SNSを利用した介護に関する情報や、ポジティブ思考の発信です。SNSでの発信は、西川の発案でした。ITに精通している西川がいなければ、SNSで発信するには至らなかったと思います。
SNSでアウトプットすることは、自らの思考の整理にもなり、大変いい機会ですよね。
働く環境の改革についてもぜひ、教えてください!
繰り返しになりますが、私たち3人は、社会福祉法人觀寿々会の、特別養護老人ホームに勤めています。法人としては、他法人と比較しても働きやすい環境だとは感じているものの、平成27年4月から施行された介護保険法改正(※)ににより、原則は特養への新規入所者を要介護度3以上の高齢者に限定された結果、利用者の重度化が進行し、職員の業務負担も増大していきました。身体だけでなく心理的にも疲弊する自分たちや仲間たちを見て、抜本的な改革が必要だと考えるも、他施設などと比較して「設備面が劣っているから」「そもそも職員待遇の差があるからでは?」と言い訳ばかりが思い浮かび、なかなか前に進めませんでした。
そんな中、先輩職員から「長井くん、公益財団法人社会福祉振興・試験センターで海外研修があるらしいよ、挑戦してみたら?」と声をかけてもらったんです。もちろん審査があったので、ダメ元で挑戦してみました。なんと通過したんです。
※参考:地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の概要
すごいですね!公益財団法人社会福祉振興・試験センターで、そんな素晴らしい機会があるのですね。そして、なにより挑戦し、それが叶ったのが素晴らしいですね!
どうしたら職場環境が今以上に良くなるのか、改革のヒントを得るべく、北欧デンマークへの海外研修に参加しました。
研修では大きく3つの学びを得ました。ひとつは、「ゆりかごから墓場まで」の社会保障制度の在り方、2つ目は北欧の人々の一般的な考え方です。特に影響を受けたのが『ヒュッゲ』です。デンマーク人には『ヒュッゲ』という考え方があります。日本語に例えようにもしっくりする言葉は見当たらないのですが、私は『大切な人や物に”感謝すること”』と解釈しました。通訳の方によると一般的なデンマーク人は週末になるといつもより早く退社し、家族や友人と過ごす機会を設けます。過ごす際もロウソクの灯火を囲い、共に語りあい、感謝し合うのです。
そして3つ目は、業務の電子化でした。デンマークでは電子化がかなり進んでおり、行政サービスのほとんどがデジタル化されていました。介護サービスにおいても日本のケアプランに同等する書類に関してもメールでの送信あるいは電子署名でした。
欧米では、日本は働きすぎだと揶揄される程ですから、働き方は違いますよね。しかしながら、日本においても、欧米に倣った働き方をする人たちが増えてきましたよね。
電子化は、さすが欧米は早いですよね。日本においては、このコロナ禍で露呈されましたが、電子化においても遅れていると言わざるを得ません。
海外研修から得たもの①ー職場のデジタル化改革
海外研修から学びを得て、戻ってからはどうされたのですか?
戻ってからは、石黒、西川のマイボディガードに共有し、デンマークで学んだことを実践するために、2つの導入を試みました。まずは、電子カルテ・タブレットの導入です。施設長に相談すると、すぐに近隣の既にデジタル化を進めている特別養護老人ホームにアポイントを取り付けてくれ、視察に行かせてもらいました。
正直、お若い3人の発案で、「すぐデジタル化の検討をしましょう」となる職場環境は素晴らしいと思います。職場の皆さんとの関係性はどうなのですか?
施設長はもとから現場の声をよく聞いてくださる方です。また職場の先輩方、同僚たちも、私たち3人がタッグを組んで活動していることを応援してくれています。
それは頼もしいですね。このような関係性を羨ましいと思う同業者は多いのではないでしょうか。
実際に導入が決まったときは、正直全ての人が歓迎してくれたわけではありませんでした。普段からパソコンやタブレットを使っている人は抵抗がありませんが、そうではない人にとっては不安があったようです。しかし、仕事の合間に説明会をたくさん開催して、使い方などをレクチャーし、不安を解消していきました。導入後は、初めの1か月こそ、現場にインプットするのに苦労しましたが、3ヶ月、1年と経つうちに、みんなが使いこなしてくれました。
電子化を乗り越えられたポイントは何だと思いますか?
現場の平均年齢が割と低いということも影響しているとは思いますが、やはり、職場のみんなの想いは同じで、記録等の業務時間を短縮させ、「利用者さんの個別ケアの時間をとりたい」「レクの時間をしっかりとりたい」「大変な仲間のサポートがしたい」という想いがあったからだと思っています。
結果的に、業務後のデスクワークが減り、余暇の時間が取れるようになりました。業務後にのんびり仲間同士のコミュニケーションの時間が生まれたり、休みの日に集まって、ソフトボールを楽しむ人たちが出てきたりしましたね。コロナで今は集まれていませんが。
それは、大変効果が出ていますね!お三方の行動力、周囲の理解や協力の賜物ですね!
つづきは、後半をぜひ、お楽しみに!