今回のインタビューは、社会福祉法人觀寿々会の特別養護老人ホームに勤める3人で結成した「マイボディガード」さん。3人のお話をお聞きしたので、今回は前編/後編と分けてのご紹介です。利用者さんのために、職場環境の改善に奔走しながら、Twitterでは、介護に関するポジティブな情報や、自己啓発で得た内容を発信しているそう。マイボディガードの3人から、活動に至る経緯や活動内容、今後の抱負などをお聞かせいただきました。
それでは、後半をどうぞ。
海外研修から得たもの②ー『ヒュッゲ』≒ 感謝のこころ
もう一つの『ヒュッゲ』の導入とは、どのようなことですか?
デンマークの『ヒュッゲ』の考え方に、とても感銘を受け、なんとかその考え方を導入できないか、考えました。私たちは、『ヒュッゲ』を『大切な人や物に”感謝すること”』と解釈し、職場で実践していくことにしました。
具体的には、「感謝を伝えること」を職場の当たり前にすることでした。些細なこと、普段の業務でも、3人で率先して、「ありがとう」と感謝を伝えていきました。10年以上も一緒に働いている仲間から、少しのアシストに対しても「ありがとう」と言われて、初めは周りもびっくりしていましたね。少し恥ずかしさもありましたが、継続していくと、職場にも浸透していきました。
これは心理学的にも証明されていますが、「自己肯定感」が関係していて、感謝されてネガティブな気分になる人は皆無で、寧ろポジティブな気分に変化していました。最終的に自分たちが「ありがとう」と言われることに対して、心の中で「いやいや、こちらこそ、こんなに良い気分にしてくれてありがとう」と呪文のように唱えていました(笑)
「ありがとう」って、素晴らしいパワーを持つ言葉ですよね。私も大好きです。
そうですよね。そして次に考えたのが、「この感謝の声を形として相手に届けられないか」ということでした。スターバックスの「グリーンエプロンカード」を参考に「スマイル トゥ スマイルカード」を導入し、業務の中で仲間の「素敵だな」と思うことを書いたカードを届ける活動を始めました。自分自身の長所って、自分で理解していないことも多いので、「自分ってこんな一面があったんだ」と思うのと同時に、介護職員は「人を励ますプロ」ですから、一言一言に重みがありました。
たった一言「ありがとう」と言おう、そんな個人的な取り組みが仲間内に広がり、部署全体に広がり、結果的には、職員間の連携や、職員の自己肯定感、そして幸福感を高めることに繋がるとは思いもよりませんでした。
素晴らしいですね、長所を周りから教えてもらえることは自己覚知に繋がりますよね。そしてそのことが自己肯定感や幸福感の醸成をも可能にしたのですね!
そうですね。
色々な改革を進めて、職員や利用者さんの「笑顔」が増えました。
これは、私たちも常日頃から意識していることですが、職員が笑顔でないと、利用者さんも笑顔になるはずはないんです。
今後のマイボディガードの活動
今後は、どんなことに取り組んでいきたいですか?
3つほど考えていることがあります。
ひとつは、今までの改革で生まれた余裕ができてきたものの、なぜか職員のオーバーワークが後を絶たない現実があります。そこで、『残業事前申請制度』の導入と『エッセンシャル思考』のインプットに取り組みました。業務や書類の断捨離、デンマークでの研修を参考にしたアクティビティ部(レクリエーション・余暇活動援助を行う専門部隊)の創設、清掃・シーツ交換などの間接業務を行う介助員の雇用などを進めてきました。まだまだ改善の余地があり、今もマイボディガードで検討を重ねています。
とても大切なことですね。「やらなくてもいいことまでやること」が美徳された時代は終わりました。
2つ目は海外からの技能実習生についてです。彼らと、通訳、担当の職員との3者面談はあるのですが、現場の私たちとは、なかなかそのような時間が取れていません。1対1で現場の人間と対話の時間をとって、彼らの現場に対する意見なども聞くような機会を取れたらと考えています。どうしても、実習生の方々は私たちに遠慮しているようですので。
聞いていてとても嬉しいです。ニュースでは、実習生に対しての劣悪な環境や仕打ちがあると聞きます。このように実習生の方々を大事にしている皆さんの話を伺えて、安心しました。ありがとうございます。
3つ目は同業他施設の職員とのコミュニケーションです。介護業界の施設・事業所が閉鎖的ではないかと思えて仕方がないんです。施設間の横の繋がりが活発的になり、情報交換がしやすくなれば、介護方針や介助方法、職場環境、施設内委員会の活動などをお互いに参考にすることができ、結果的に介護サービスは向上するのではないかと考えています。
行政や協議会などを通してではないところのコミュニケーションということですか?
はい、個人間で情報共有が可能になればと。例えばA特養とB特養に排泄委員会があるとします。お互いの情報を気軽にオンラインで発信し合うことで、お互いの委員会の活動内容などが把握ができるアプリがあれば良いなって思っています。その活動に私たち、マイボディガードが携われたらと考えています。
その他に、アメリカの「ケアドットコム」のような福祉人材のオンラインマッチングアプリや、福祉人材個人に対してのスポンサー制度なども普及するといいなと考えたりもしています。
希望に満ち溢れていますね!
3人の各々の目標とメッセージ
最後に、3人の個人の目標と、読者の方にメッセージをお願いします!
実は、この社会福祉法人觀寿々会を卒業することとなりました。外を見てみたいという想いと、介護を語るなら訪問介護/在宅ケアを知っておきたいという想いが強くなってきたことと、西川が私たちの想いを継いで、改革を続けてくれるので、安心して卒業を決意できました。施設長も背中を押してくれました。大変感謝しています。
今後についてですが、実は、2021年8月より、寿々グループの株式会社輪華に移り、訪問介護/在宅ケアを学ばさせていただく予定です。経営理念である「良かったと思える会社」に最大限、貢献していき、利用者様、ご家族、地域の方、他職員に「良かった」と思っていただけるよう努めていきます。
また、訪問介護/在宅ケアを学んで、利用者さんにとっての「一番近い存在とは何か」を模索して行きたいと思っています。
社会福祉法人觀寿々会での経験はかけがえのないもので「支援」「ケアマネジメント」「利用者及び家族に対する相談援助」「入所に関する相談」「請求業務」等、様々な業務に携わらせていただき、心より感謝しています。その中でマイボディガードのメンバーに出合い、共に改革を実行してきたことも、貴重な経験です。
私も今後は、2021年8月から寿々グループの株式会社輪華へ入社する運びとなりました。まずは現場で半年ほど経験を積み、サービス提供責任者を経て、マネジメントをする立場になることを目標としています。その後、新規事業の立ち上げを経験する機会を掴んでいきたい。また、様々な事業に携わっていきたいです。
包括的に利用者さんの生活を支えていく人材となるために、会社・環境・人・法律等々の全体の構造を理解していきたい。この共生社会の一翼を担える存在になりたい、そう考えています。
私は、この長井・石黒と出会った社会福祉法人觀寿々会に残り、2人との想いを継いで、改革を進め、もっともっと社会福祉法人觀寿々会を盛り上げていければと考えています。
そして更に、個人としては、新たな道も開拓して行きたいと思っています。
ひとつは、広報活動です。施設長の下で広報を学んでいきたいと考えています。もうひとつは面接や説明会などの採用活動に力を入れて行きたいと思っています。この2つの活動を通して、社会と介護の架け橋になって行きたい。私だからこそ伝えられる介護の仕事のリアル、そして、今までのマイボディガードの想いを、仕事を通じて発信し続けて行きたいです。
最後にマイボディガードとして。
世間では低賃金、3Kとネガティブイメージ満載の介護業界ですが、長寿国家・日本として考えると、直接的もしくは間接的に全ての国民が通る道なのかもしれません。もはや介護を語らずして人生を全うすることは皆無ではないでしょうか。どのような形であれ、介護サービスのニーズはなくなりません。介護業界に従事する方、共に頑張りましょう!
他業界の方で福祉・介護が気になっているのであれば、この掲示板で様々な方のインタビューを見てみるのもいいかもしれませんね。介護業界は思ってたよりもポジティブな世界なのかもしれませんよ。ぜひ、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。
貴重なお話ありがとうございました!
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記事内でご紹介させていただいた法人様はこちら
社会福祉法人觀寿々会
寿々グループの株式会社輪華