福祉の掲示板
誰一人取り残さない社会を目指してー福祉に関わる仕事や活動をする方向けに、インタビュー記事や、仲間を募集する掲示板を掲載しています。福祉に関わる方々に、新しい一歩や気づきの『きっかけ』をお届けできますように。
Jobインタビュー

『福祉は、人生をデザインする仕事』鴇田陽介さん/Jobインタビュー vol.1

『福祉の掲示板』の初回インタビューは、鴇田陽介さんです。とても柔らかい雰囲気の中に、強い信念のある方。鴇田さんは保育士として、児童養護、発達障害児支援に携わり、新しいカタチの保育園創立を目指しています。そんな鴇田さんの現在のお仕事、これから目指すもの、鴇田さんのルーツを聞いてみました。

現在のお仕事について

管理人

はじめまして!今日はよろしくお願いします!早速ですが、今は、どんなお仕事をされているんですか?

鴇田陽介さん

福祉の事業コンサルティング、専門学校の講師、NPO団体の理事などをしています。その他に、近い将来、新しいカタチの保育園を創ろうと思っていて、そこに思考を巡らせていますね。

新しいカタチの保育園ーママパパのための保育園ーを創る

管理人

色々とご活躍されているのですね!新しいカタチの保育園とは、どのようなものですか?

鴇田陽介さん

ママとパパのための保育園です。今の一般的な保育園は、「親が働いている」もしくは、「病気である」などの理由が必要です。でも、それっておかしくないですか?親がゆっくり美容院に行ったり、お買い物したり。ママパパが自分の時間を作れるような支援ができる保育園を作りたいんです。

別の視点で見てみると、子どもと一緒にいる、接触時間の長い人が虐待をしているケースが多いんです。であるならば、ほんの少しでいいので息を抜ける時間があるだけで、虐待防止の力になれるのではないかと思いました。そんな時間を作れるような活動をしていきたいんです。親だけで子どもを育てるような社会になったのは、ここ数十年の話。もっと多くの人たちで子どもを育ててもいい。育てるべきだと思っています。

管理人

とても共感します。「母親は遊ぶ時間を持ってはいけない」、「母親は全てを子育てと家事に捧げるのが当たり前」、そんな雰囲気が日本にはまだあると思います。
保育園を創るための詳細な計画は既に進んでいるのですか?

鴇田陽介さん

はい、できれば年内~2年以内には、保育園を設立できるように動いています。保育園の作り方も、新しいカタチで創っていきたいと思っています。

管理人

もうすぐですね!
「新しいカタチで保育園を創る」とは、どのような意味ですか?

鴇田陽介さん

保育園を創るって、とてもお金が必要なことじゃないですか。銀行にお金を借りたり、親がお金を持っていれば、親にすがったり(笑)。でも、それってとても大変ですよね。再現性がとても低い。なので、クラウドファウンディングでお金を集めて、保育園を創ろうと思っています。今はそのための信頼・信用の土台を創る活動をしています。今、私のtwitterのフォロワーさんが約2,000人。これが5,000人になったら、それを一つの目安として、クラウドファウンディングを立ち上げようと思っています。

管理人

クラウドファンディングですか!いいですね。微力ながら、応援させてください!!

鴇田陽介さん

はい、ありがとうございます!保育の専門学校で児童養護の講師をしたり、福祉事業のコンサルティングも併せて動くことで、信頼・信用を培っていきたいと考えています。

青春ー児童養護施設での経験

管理人

新しいカタチの保育園を創ろうと思ったきっかけは何だったのですか?
ママパパの時間を作ることや、児童虐待の実態なども影響しているということですが…

鴇田陽介さん

実は僕、児童養護施設で働いていたんです。短大で保育士のための勉強して、新卒で田舎の児童養護施設に就職しました。

管理人

そうなんですね!なぜ児童養護の世界に飛び込んだのですか?

鴇田陽介さん

僕は高校球児で部活に没頭していました。県大会でも上位の高校で、本当に野球しかやってこなかったんですね。引退したら目指すものがなくなって、ぽっかり心に穴が空いてしまって。そこで、将来どこに向かうのか考えてみたんです。自分ができそうな仕事を書き出してみました。その後、「給料が悪かったら…」「人間関係が悪かったら…」など、嫌なことがあったら辞めてしまうだろうな、と思う仕事を消していきました。すると、保育士しか残らなかったんです。僕の母親が保育士で、その仕事に没頭していたことも大きく影響していると思います。

保育士の短大に入り、学んでいるときに、「夜回り先生」を知りました。僕が何不自由なく生活し、好きなことに打ち込み、平和に生きている間に、大変な思いをしている子たちがたくさんいたことを知り、驚愕しました。僕は幸せに生きてきた。その分これからは、そんな子たちのために生きていきたい。そう思ったんですよ。

管理人

なんと…その思いに、頭が上がりません…児童養護施設でのお仕事はどうでしたか?

鴇田陽介さん

びっくりするほどど田舎だったこともあり、人手不足はより深刻でしたから、とても大変でしたが、すごく楽しかったんですよね。一言で言うと、僕の「青春」ですね!

幼児から18歳まで、さまざまですし、虐待を受けてきた子ども達も多い。宿直の日なんて朝ごはんは40人分作ったり、普段は朝から、20人の子どもたちを起こして、顔を洗って、ご飯を食べさせて、学校に登校させて、保育園に登園させて、急いで掃除洗濯して…そして、子ども達の相談に乗ったり、話を聞いたり、一緒に遊んだり…めまぐるしい程でしたが、子ども達との時間は本当に楽しかったです。

お誕生日の子がいれば、その子の好きなおかずを作ったり、初めてのラブレターをもらったことを相談しにくる子がいたり、高校生の子ども達と夜に大騒ぎしてみたり(主任に怒られたこともありますが(笑))。

管理人

よく、NEWSで児童養護施設などの劣悪環境などと謳われているので、「児童養護施設で働いていた時間が楽しかった、青春だった」という言葉やエピソードを聞いて、とても心温まると言うか、少し安堵しました。

鴇田陽介さん

もちろん中にはそういった劣悪なケースがあることも事実だと思います。その点に関しては、大いに改善をしていかなければならないことだと思います。けれどその背景には、圧倒的な職員不足があります。それゆえに、目が行き届かなかったり、十分に子ども達の声を聞いてあげられなかったり、というのは、どうしても起きてしまうことかもしれません。

話は少し逸れますが、児童養護施設などで「働きたい」「興味がある」方々と、社会的養護施設を繋ぐ、「社会的養護総合情報サイト チャボナビ」も、私が理事をしているNPO法人チャイボラで運営しています。ぜひ、児童養護施設などで働きたいと思っている方がいらっしゃれば、覗いてみてください。様々な社会的養護施設での見学会や求人情報などが載っています!

管理人

素敵ですね!本当に子ども達を支援する場って、どこも人手不足が深刻ですよね。少しでも子ども達を支援する場に、支援の手が増えることを願います!児童養護施設がインターネットで調べられて、しかも写真が載っていたり、ライブ配信もできたりするなんて、本当に意外です。もっと、閉じられた世界だと思っていました。

私の話になってしまいますが、私が社会福祉士を取るために、実習先を児童養護施設にしたいと思っていましたが、ほぼ情報がなく断念したんです…もっと早く鴇田さんにお会いしたかった…

鴇田陽介さん

施設のみなさんも、門戸を開いてらっしゃるところが多いと思います!ぜひ、覗いてみてくださいね!

児童養護施設の仕事は本当に楽しかったんです。でもある時、ひとりの子が入所してきました。様々な問題を持っていました。その時、まだ僕は勉強不足で、うまく接してあげられなかったんです。その子は結局、施設で多くの問題を起こしてしまって、僕の施設にはいられなくなってしまい、児童自立支援施設に行くことになってしまったんですね。僕はここで、いわゆるバーンアウトしてしまいました。瞼が降りてこない、何を食べても味がしない、朝起きたと思ったら、もう夜になってしまっていた、など。きっと病院にかかったら、鬱と診断されていたかもしれない程でした。自分の限界を感じ、転職を決意しました。

しかし、目に付く仕事は全て子ども関係。これは、「子どもと向き合え」という使命かもしれないと感じ、「よし、徹底的に子どもと向き合おう!」と、当時ベンチャーだった、障害児通所支援事業と就労移行支援事業を展開する、ハッピーテラス株式会社に転職しました。

発達障害と向き合うー発達障害児施設での経験

管理人

すごい志ですね。自分に向き合うことを選んだのですね。本当に尊敬します…
ハッピーテラス株式会社ではどのようなお仕事をされていたんですか?

鴇田陽介さん

ハッピーテラス株式会社は発達障害をお持ちのお子さんへのご支援を行う教室や、発達障害をお持ちの大人の方への就労支援を行う事業所を運営し、全国にフランチャイズ展開を行っています。私は直営店である放課後等デイサービスの保育士からスタートして、店舗の運営、フランチャイズ店舗へのノウハウ提供、新規事業立ち上げ、その後は企画、社長室など、5年間で多くの経験をさせていただきました。すごくやりがいがありましたし、やればやるだけ成果が出た。こんなに多くの経験をさせてもらったハッピーテラス株式会社には感謝しかありません。

でも、心のどこかに、児童養護がひっかかっていたんですね。そのことを社長に相談したんです。すると、今僕が理事をしているNPO法人チャイボラを紹介してくれたんです。そこからは、パラレルキャリアで、ダブルで働きました。とにかく楽しかったので、がむしゃらに働いていました。

独立ー保育園創立を目指す

管理人

そこからの今の独立の経緯も知りたいです!

鴇田陽介さん

それから2年間くらい経った時に、NPO法人チャイボラから「理事をやらないか」と声をかけてもらいました。それから1年位したタイミングで結婚をして、ちょうど、「家族の時間をきちんととりたいな」と思ったタイミングでもありました。僕の妻も保育士なのですが、働いて子育てもして…というのを身近で見て、親業、子育ては、世の中で一番大変かもしれない、という気持ちが、僕の背中を押しました。そして、今までの児童養護への思いとともに、独立して新しいカタチの保育園創立を目指すことにしたんです。

みなさんへのメッセージー福祉は人の幸せをデザインする仕事

管理人

私が福祉の世界に足を踏み入れたのも、児童虐待や児童養護の影響が大きいといこともあり、とても共感しますし、心から応援したいです!

最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします!

鴇田陽介さん

僕は、こどもたちが「ありがとう」って言ってくれるような未来を作りたいんです。このままだと、「なんでこんな未来をつくったの?」という社会になってしまう。そこをなんとかしたいんです。そんな僕のビジョンに共感してくれる方、一緒にそんな未来を目指したい方がいたら、ぜひ連絡ください!一緒にやりましょう!

福祉業界は今が勝負で、変革期です。福祉って「人の幸せをデザインする仕事」ですよ。そんなかっこよくて、人の幸せを考えることができる仕事です。ぜひ、一緒に!

管理人

とても貴重なお話、本当にありがとうございました!